東京府下の矢口町や市の倉に住み 馬込の風景を描いた現代版画家
現代版画
高橋松亭について……
 
 高橋松亭(弘明)は、昭和6年(1931)に現在の東矢口3丁目31番に移り住んだ、彼は、当時はあまり知られない東京郊外の風景「市の倉」「馬込」「千束」などを題材に取り上げている。川瀬巴水よりも地元の鄙びた風景を版画にしている。

 私には川瀬巴水がやや油絵の匂いがするならば、高橋松亭(弘明)はパステル調又は水彩画の感じがする。左の『市ノ倉弘明画房』は雨降る「市の倉」を描いている。茅葺き屋根の家が高橋松亭(弘明)のアトリエと言われている。まったくの素人の感想だが、画面半分上部の版画的手法に比べ、下半分は我が家に向かう道を省略のない普通の描き方をしている。

 左あぜ道の小川は、おそらく豊富な湧水から引かれた水であろうか、中丸・西馬込地区は湧水が至る所に湧き、内川に流れ込んでいた。
蓑(みの)に三つ叉の鍬を担いだ女性が戦前の「市の倉」を彷彿させる。このような風景は、大田区で昭和35年頃まで見ることが出来た。耕地整理の完成で住宅がふえると湧き水は涸れてゆき、内川も暗渠になった。

高橋松亭(弘明)「市ノ倉弘明画房」昭和2年(1927)から10年(1935)377×163ミリ
 ●高橋松亭 の画集(清水久男著)

高橋松亭「都南八景」の一枚、市の倉の我が家を描いた新作版画。高橋松亭(弘明)と川瀬巴水は東京府下武蔵野の雪風景を見事に表現している。

高橋松亭の現代版画

高梨松亭の特集ページ  右側には内川の
雪景色浮世絵

高梨松亭夫妻   右ページは「市ノ倉弘明画房」昭和2年

右ページは池上本門寺と都南風景

御覧のように懐かしい昔の馬込風景が紹介されている。高橋松亭や川瀬巴水が活躍した大正新版画の世界は、江戸時代の浮世絵と違い、進化した精緻な表現で版画の持つ到達点を示しているように思われる。それは風景画の夕暮れや夜景の版画に現れている。私の大好きな大正新版画である。

上 高橋松亭 の画集(清水久男著)も紹介されている。
左 高橋松亭を紹介する外国向けマガジン
『DRUMA』
2008年刊
『DARUMA』冬57号で高橋松亭を特集している。このマガジンは日本の美術・骨董を外国向けに紹介している。 判型A4、本文58ページ、オールカラー、価格日本円で1000円である。尼崎にある『DARUMA』出版が発売している。

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