浮世絵が創った江戸文化 団扇絵の世界
 歌川豊国と国貞の団扇・国政のお色気団扇である


江戸時代、天明頃から喜多川歌麿の美人画、歌川豊国の役者絵に続いて、歌川国貞などの役者絵が流行した。日本の三大団扇と言われる「丸亀うちわ」「京うちわ」「房州うちわ」(江戸うちわ)が有名となる。房州うちわは「丸形の団扇」が定形である。しかし残っている浮世絵師の団扇は横型が多い、やはり浮世絵は横や縦の構成で丸形は描きずらかったのではないか。

有名な北斉、国芳、広重などほとんど全てが団扇絵を描いている。団扇屋としては売物、引札にするものなどに使用する絵は綺麗で見栄えのするものが求められ、良くないものは売れないし、引札の依頼主からもクレームが来た事であろう。浮世絵師にとっても大事な収入源であった。以下に紹介する団扇絵は、国立国会図書館デジタル化資料に収蔵されている歌川国貞(天明6年〜元治元年・1786〜1865)(三代豊国)の団扇絵である。国貞之死後、幕末から明治に活躍した三代目歌川豊国も生まれていて混同しやすい。


「近江八景 石山秋月」絵・広重・豊国 元治元年(1864)版元・辻岡文助
 東京都立図書館蔵




「近江八景 勢田夕照」絵・歌川国貞 元治元年(1864)版元・辻岡文助
 東京都立図書館蔵



「近江八景 唐沢夜雨」絵・歌川国貞(三代豊国) 元治元年(1864)版元・辻岡文助 東京都立図書館蔵 
番傘に書かれているのは版元・辻岡屋文助の屋号である。一種の引き札である。

「月」絵・五渡亭国貞(三代豊国) 年不明 版元・伊場仙 伊場屋仙三郎 国立国会図書館デジタル化資料 


「花」絵・五渡亭国貞(三代豊国)天保年間 版元・伊場仙 伊場屋仙三郎 国立国会図書館デジタル化資料 



「雪」絵・五渡亭国貞(三代豊国)天保年間 版元・伊場仙 伊場屋仙三郎
 国立国会図書館デジタル化資料 


「両国美人団扇絵」絵・国貞 詳細不明 国立国会図書館デジタル化資料  両国河岸の見世物小屋が立ち並ぶ場所である。芸者は指に布の袋を被せている。汗ふきか化粧直しか判らない。




「口紅をつける花魁」絵・豊国(歌川豊国)版元・大国屋 文政6年(1823)東京都立図書館蔵  化粧する花魁の華麗な姿、頭の鼈甲の簪が重そうである。花魁はファッションリーダーであり、髪形にも懲り、その髪を扱う女髪結いも登場した。

「五節掛物ノ内三月」絵・豊国(歌川豊国)名主2印・村松源六・福島和十郎 天保14年から弘化4年、版元・伊場屋仙三郎 国立国会図書館デジタル化資料 



「五節掛物ノ内正月」絵・豊国(歌川豊国)名主2印・村松源六・福島和十郎 天保14年から弘化4年、版元・伊場屋仙三郎 国立国会図書館デジタル化資料 


「五節掛物ノ内五月」絵・豊国(歌川豊国)名主2印・村松源六・福島和十郎 天保14年から弘化4年、版元・伊場屋仙三郎 国立国会図書館デジタル化資料 



「五節掛物ノ内七月」絵・豊国(歌川豊国)名主2印・村松源六・福島和十郎 天保14年から弘化4年、版元・伊場屋仙三郎 国立国会図書館デジタル化資料 


「五節掛物ノ内九月」絵・豊国(歌川豊国)名主2印・村松源六・福島和十郎 天保14年から弘化4年、版元・伊場屋仙三郎 国立国会図書館デジタル化資料 



「五節句の内 7月」絵・国貞(三代豊国) 天保年間頃 版元・風月堂 国立国会図書館デジタル化資料 


「秋 四季ノ内 燈篭玉菊」絵・豊国老人(三代豊国)天保年間頃 版元・辻岡文助 東京都立図書館蔵 



「諸国名所 肥前長崎」絵・歌川国貞(三代豊国)慶応二年(1866)東京都立図書館蔵



「夏 四季ノ内 仮宅の見通し涼」絵・香蝶楼国貞(三代豊国)天保年間頃 版元・伊場仙 伊場屋仙三郎 国立国会図書館デジタル化資料  焼け出された吉原の仮営業所の引札(宣伝)か、伊場仙は、団扇問屋である。



「春 四季ノ内 王子の花見」絵・香蝶楼国貞(三代豊国)天保年間頃 版元・伊場仙 伊場屋仙三郎 東京都立図書館蔵 花見をする母娘か。

版元の辻岡屋文助は、故郷が越前(現在の福井県)で和紙漉きの里であったため、浮世絵の奉書紙に詳しく商売の助けになった。

「春 四季の内 おかるの見立」絵・歌川国貞(三代豊国)元治元年(1864) 版元・辻岡屋文助 東京都立図書館蔵 


「冬 四季の内 雪の辻君おりへノ見立」絵・歌川国貞(三代豊国)元治元年(1864) 版元・辻岡屋文助 東京都立図書館蔵 


「夏 四季の内 涼芸者見世吉乃見立」絵・豊国老人(歌川国貞・三代豊国)元治元年(1864)版元・辻岡文助 左背景は木場の材木か、川は大川かもしれない。



「東都三十六景 両国おふじ」絵・豊国(歌川豊国二代か三代)版元・不明 彫師・松島彫政 幕末元治頃か、人物は豊国、背景は広重の合作らしい。国立国会図書館デジタル化資料 

「近江八景 矢走帰帆」絵・歌川国貞 元治元年(1864) 版元・辻岡文助
 東京都立図書館蔵 


「五十三次 鞠子」絵・香蝶楼国貞(三代豊国)天保年間頃 版元・具足屋 福田熊次郎 国立国会図書館デジタル化資料  東海道五十三次ノ内 鞠子の宿である。


丸形の団扇画
「歌川国政の画」である。画面構成から春画らしい、そう推測するのは女性背後に男がいること、女性の表情が春画を連想させる事である。丸の形は覗き見を連想させる。また、画中に国政の名前があることで、画が丸の画面であるが分かる。この事から「丸の構成」は団扇以外に考えにくい、推測であるが吉原など花街(岡場所)で配られたのかも知れない。丸の欄外に浮世絵師の記載がある場合、版形は長方形である。(所蔵・馬込と大田区の歴史を保存する会) 歌川国芳の団扇画